1: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:28:14 ID:DlpS
数年前、ふとある村の事を思い出した。
一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。
心のこもったもてなしが印象的だったが、なぜか急に行きたくなった。

連休に一人で車を走らせた。
記憶力には自信があるほうなので、道は覚えている。
村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、その看板を見つけたときあれっと思った。

「この先○○km」となっていた(と思う)のが、「巨頭オ」になっていた。

変な予感と行ってみたい気持ちが交錯したが、行ってみる事にした。
車で入ってみると村は廃村になっており、建物にも草が巻きついていた。

車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、頭がやたら大きい人間?が出てきた。

え?え?とか思っていると、周りにもいっぱいいる!
しかもキモい動きで追いかけてきた・・・。
両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながら。

車から降りないでよかった。
恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。
帰って地図を見ても、数年前に言った村と、その日行った場所は間違っていなかった。

だが、もう一度行こうとは思わない。

2: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:29:08 ID:Tjw4
長年連れ添った仲の良い老夫婦がいて
「片方が先に死んだら、さみしくないように壁に埋めよう」
と言い交わしていた。
しばらくして、婆さんが先に死んだ。
爺さんは悲しみ、約束通り婆さんの死骸を壁に埋めた。
すると、ことある事に壁の中から「じいさん、じいさん…」と婆さんの呼ぶ声がする
爺さんはその声に「はいはい、爺さんはここにいるよ」と答えていたが。
ある日、どうしても用事で出なくてはいけなくなったので村の若い男に、留守番を頼んだ。
男が留守番をしていると、壁の中から婆さんの声がする
 
「じいさん、じいさん…」
男は答えた。
「はいはい、じいさんはここにいるよ」
最初のうちは答えていた。
けれどしかし、婆さんの声はなんどもなんども呼んでくる。
「じいさん、じいさん…」
やがて、男は耐えきれなくなって叫んだ。
「うっせえ! じいさんはいねーよ!」
すると、壁の中から鬼の形相をした老婆が現れ、「じいさんはどこだあ!」と叫んだ

4: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:30:07 ID:VGzo
あんま怖くない奴厳選すな

5: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:30:50 ID:Tjw4
すると突然、まばゆいばかりのスポットライトが飛び出したばあさんを映し出す
「JI-I-SA-Nは」「どこだ!」ステージにばあさんの声が響く
詰め掛けたオーディエンスはばあさんの久々のステージに期待で爆発しそうだ
今晩も伝説のリリックが聴ける。ストリート生まれヒップホップ育ち。本物のラップが聴けるのだ
キャップを斜めに被りオーバーサイズのTシャツをきたじいさんがターンテーブルをいじりながら目でばあさんに合図する
重たいサウンドがスピーカーから響く。ショウの始まりだ
「 ここでTOUJO! わしがONRYO! 鬼のGYOUSO! ばあさんSANJYO! 
 違法なMAISO! じいさんTOUSO! 壁からわしが呼ぶGENCHO!
 (ドゥ~ン ドゥンドゥンドゥ~ン キュワキャキャキャッキャキュワキャ!)
 年金減少! 医療費上昇! ボケてて大変! 食事の時間!
 冷たい世間を生き抜き! パークゴルフで息抜き!
 どこだJI-I-SA-N老人MONDAI! そんな毎日リアルなSONZAI!
 SAY HO!(HO!) SAY HO HO HO HO!」
じいさんのプレイも好調だ。オーディエンスの熱狂はこわいくらいだ。
まだ、俺らの時代は始まったばかりだ、そんなメッセージがばあさんの口から飛び出していく
本物のヒップホップが、ここにあるのだ。

6: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:31:23 ID:DlpS
2ヶ月ほど前のある夜、風呂でいつものようにシャンプーをしていると後ろから誰かの視線を感じた。
ふと目を開けて後ろを振り向いても、誰もいない。
最初は気のせいかと思い気にもとめていなかった。
しかし、日が経つにつれてシャンプー中の背後からの視線というか気配はどんどん強くなっていった。
いつ振り返って見ても誰も居ないのだが、いつしか背後からの気配で背中がゾクゾクするくらいになっていた。
シャンプー中に目を閉じている時の怖いと思う気持ちがそうさせるのか、それまで不思議とシャンプーをしている時以外は気配を感じなかったのでまだよかったのだが、ある日とうとう事件は起こった。
その日、会社の飲み会で帰宅が遅くなったのでシャンプーは止めようかとも考えていたのだが、酔いもまわっていたしサッパリとしたかったので、いつものように恐々とシャンプーを始めた。
すぐにまた背後からの強烈な気配がする。
しかしその日は違った。
その日は気配だけでなく背後から女の笑い声まで聞こえてきた。
びっくりして振り向こうにも体が動かない。
誰に何を謝っているのか分からないけど、恐怖のあまりチキンな俺は心の中で「ごめんなさい!ごめんなさい!」と必死で謝り続けた。

7: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:31:40 ID:DlpS
しばらくそんな状態が続いたが、謝り続けていると次第に体が動くようになった。
その頃には背後の気配も無くなっていたので恐る恐る後ろを見ると、そこには物凄い形相でこちらを睨む全身血まみれの女が居る。
服は着ていた。
そこで記憶が無くなった俺は、明け方、寒さで目が覚めた。
どうやら、そのまま気絶していたらしい。
恥ずかしながら失禁していた。
それ以来、どんなに痒くても頭を洗っていない。
一ヶ月ほど前の出来事だ。

8: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:32:07 ID:DlpS
あんま怖くないが俺の体験談を聞いてくれ。
二か月ぐらい前、俺は確か知り合いと親戚の祖父の葬式に出たんだ。
祖父の家は俺が今すんでる家から3時間くらいの所にあるんだけど 、式はまぁ普通に終わり、次の日仕事もあったもんだから、その日のうちに帰る事にした。(知り合いも同じ方向)
夜中の2時過ぎくらいには家の近くまで着いた。
そこで喫煙者の俺はタバコが切れたので自販機を探してたら、ちょうど古いアパートの近くに自販機があった。
この辺は家から近かったけど来たことはなかった。
アパートは廃墟らしく人の気配は無く、電灯もついたり消えたりしてて不気味だった。
そこでタバコを買おうとして金入れたんだけど、何の反応もないの。
返却とかも無理。
ムカついた俺は自販機を蹴飛ばした。
その瞬間背筋に鳥肌が立った。
何かの気配がした。
恐怖で動けなかった(多分金縛りではない)。
そしたら急に自販機の底(機械と地面の間)から両手が出て来て、俺の両足を掴んだ。
手の色は青白くて血がいっぱいついてた。
びっくりした俺は叫んだんだと思う。
遠くから知り合いの車から降りる音がしたから。
で、俺は何かよく分からんが目の前がぐにゃってなった。
テレビ番組のエフェクトみたいに。
それと同時に何かに頭の中を掻き回されてる感じがした。
探し物探しててタンスの中を掻き回す感じに。
すごい吐き気がした。頭もクラクラした。
あと小さな女の声で
「…無い…………無い……」
って聞こえた。
気がついたら病室。
どうやら俺はあの日から5か間生死をさまよっていたらしい。
知り合いによると駆け付けて俺を見た時、俺は白目を向いて泡を吹いていたらしい。
あれからだいぶ経つが物忘れがひどくなった気がする。
あの日助けてくれた知り合いの名前と顔すら思い出せない。

9: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:32:30 ID:DlpS
実際にあったお話です。
怖い話が好きで、自宅の近所であった自殺の話を少し脚色して、ネットで公開したそうです。
その夜、投稿に対するレスを確認していると、突然電話が鳴りました。
自分が投稿した文章を電話の向うで朗読しているそうです。
か細い、女の人の声で。
これは自分の文章だとスグにわかり、きっと個人情報を得た人間の悪質なイタズラに違いないと思いました。
ところが、脚色部分から、次第に朗読する女の声質が変わり、かすれた声になり、男の声に変わってゆきました。
しかも、脚色した内容とはかけ離れた、実際にあった自殺の内容になっていったのです。
投稿した内容は、自殺者が女性、首吊り、文語体。
変わって行った内容は、自殺者が男性、首吊り、口語体。
実際にあった自殺は、男性、首吊り。
怖くなって電話を切り、無意識に手を合わせて「南無阿弥陀仏」を繰り返したそうです。
自分の家には仏壇も無く、そんな習慣も無いのに。
今でも、女性から男性へと変容してゆく時の声が耳について離れないそうです。

10: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:33:07 ID:DlpS
2年前渋谷で起こった話。
もうなんかわけがわからなすぎた話。
短いと思うけど長いかもわからんけど短い。でも長い。
その日俺はセンター街にいた。
その晩に友人とコンパの約束をしていたのだが、少し早く着きすぎたのでふらふらして時間をつぶしてた。
サイドの店をチラチラみていい店ないかなーって他愛も無いこと思いながら歩く。
それから30分くらい歩いて、飽きてきた。
でもやることないのでまだふらふら。
今度は真正面を向いて歩いてた。
すると変な違和感を覚えた。
その日はかなり人で混んでて視界の前には、俺と同じ方向に向かう人々の後頭部しかないわけなんだけど。
多数の後頭部にまじってなぜか女の顔面が。
俺と逆の方向に歩いてるわけでもない。
何?後ろ向きで歩いてんの?
とか思ってたそいつの体をみると体はきちん前を向いてる。
首が180度曲がってたわけだ。
え、なにこれサイボーグ?とか思っててかなり動揺してた。
その顔面ね、俺のほう睨んでんだよね。
目ん玉ギンと見開いて。
俺もう失禁寸前だったね、うん。
なんやかんやで気づいたら約束の時間。
俺は猛ダッシュで待ち合わせ場所へと向かった。
もちろんこのことはコンパのネタにさせてもらったよ。

11: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:33:36 ID:DlpS
開くフスマ

今から24~5年前N県のS市に俺はアパートを借りて一人住まいし始めた。
家賃2万のボロな借家で6畳、4畳半で汚いキッチンとトイレ付きだった。
住み始めて1週間目のこと。
最初、俺は4畳半の部屋で布団を敷いて寝ていた。
電気をすべて消して眠りについたのだが夜中に目が覚めた。
俺は寝るとき横になるクセがあり、目が覚めたときは6畳と4畳半を仕切っているフスマのほうに顔を向けた。
で冷蔵庫をキッチンのとこに置いていたのだが、冷蔵庫って夜中静かだとブーンってモーターの音が聞こえるよね?
それが最初に耳に入ってボケーっとそれを聞いてたんだ。
そのブーンって音が段々段々大きくなっていくのよ。
もう頭の中でガンガン響いてくるように・・・・
よけい眠れなくて目が冴えてきて、顔の向きはそのままにしてフスマをジーっと凝視してたんだ。
そのままジーっとフスマを見てたらスーっと音もなくフスマが開いた・・・・・10センチくらい開いた。
もう俺は頭の中がパニックになって反対側に寝返ったんだ。
そしたら女の人が笑って座っている。
年は10代後半~20歳くらいの人だった。
これは金縛りなんかじゃない。体も動くし。
俺は「うわ~~~~~~」と大声を上げて叫んだ。
もう無我夢中で隣の6畳の部屋へ行き電気を点けてその夜は震えて過ごした。
次の日からは6畳の部屋で寝ることにし一晩中電気を点けて寝るようにした。
アパートを変えようか悩んだが金も無いし結2年間そこに住んだ。
昼間でも色々怪現象あったけどね。
後に妹が高校の寮を出てこのアパートに居候したりとかあったし。
その後、2度とそういう目には遭わなかったけど。

12: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:33:41 ID:qnXL
長い 産業で

13: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:34:02 ID:DlpS
自殺観察

バイクの合宿で静岡に行った時に地元の奴に聞いた話。
そいつの友達にAと言う奴がいるらしく、ガキの頃近所の神社に虫獲りに行ったらしい。
その神社と言うのは、森の中にある物で、神主や社務所も無い小さな物だった。
神社の横には沼もあるため様々な生物が生息していたそうな。
Aが沼のほとりでタガメでもいないかと網を振っていると神社に人影が。
そこで、なんとなくAは近くの木の影に隠れたらしい。
とくに意味は無かった。
そこに居たのは若い女性二人。
境内の小さな神木の下で何かしているのが見えた。
ふたりはロープを神木の枝の根元にくくりつけていた、ふたりで。
そして何やら二人で抱き合っていた。
Aは見つかるのを何故かとても恐れ、更に深く息を殺した。
Aが見ていると女二人はペットボトルで水を飲んだあとに首に縄をくくり始めた。
自殺!?
Aは止めてみようかと思ったが、自分に大人二人が説得出来る気がしないのでよした。
と言うかこれから自ら死のうと言う人間と接触をしたくなかったのだ。
ふたりはよくキャンプなんかに使う椅子に立ち、輪っかに首を入れた。
背を向け合いながら。そして「せーのっ」と言って椅子を蹴飛ばした。
Aは目を手で覆った。
縄の締まる音が周りに響く。
しばらくしてAは、指の隙間から見た光景に腰を抜かしそうになった。
片方の女がぷらぷら揺れている相棒を凝視している。
それも笑いながら…「すごい」などと呟いてもいたらしい。
2分ほど相棒の死体を眺めると、その女も椅子を飛ばして自殺した。
Aは一時間くらいそこにいた。
ふと気が付き家に逃げ帰って親に報告した。
神奈川の女子高生だった。
現場行ってみるか?と言われたがやめておいた。

14: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:34:48 ID:hwJZ
もっと

15: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:35:29 ID:DlpS
遮断機の無い踏み切り

高校の恩師、K先生が語った話。
大学時代、先生が住んでいたボロアパートの近くに、遮断機の無い踏み切りがあった。
ある日、遊びに来た友人達を家まで案内して、踏み切りの近くを通った。
すると、友人の一人、Aが「ココは地縛霊がいる、踏み切りで自殺した女が、犠牲者を待っている」と言い出した。
Aは、よく冗談を言うお調子者だったし、今も顔がニヤけている。
先生の知る限り、そんな事故は無かったから「バカな話は止めろ」と窘めた。
でも、Aは続けて「本当だって、あの線路脇に右手の無い女が立っている」と、その場所を指差した。
「あそこだって!」
次の瞬間、先生たちの目の前で、Aの伸ばした右腕がボキンと折れた。
その後は大騒ぎ。
先生も友人も、当のAも腕をブラブラさせながらそこから走って逃げた。
その後、Aは無事回復したんだけど、電車や線路を見るとたまらなく嫌な気分になるそうで、車でしか移動しない人になったそうです。
その踏み切りに、なにか因縁があったかどうかは知らない。と、先生は笑っておりました。

16: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:35:49 ID:DlpS
鳴り続けるチャイム

ある蒸し暑い夏の夕暮れ時、俺は2階で昼寝をしていた。
ピンポ~ン、ピンポ~ン
誰か来たようだ。俺以外家には誰もいないし面倒くさいので無視して寝ていた。
ピンポ~ン、ピンポ~ン
ピンポ~ン、ピンポ~ン
それからしばらく一定のリズムをつけつつ、なり続けるチャイム。
なんだよ、しつこいなあ。一体誰が来たんだ?
2階の俺の部屋から玄関をそっと見ると、白っぽい服を着た40歳位のおばさんが、麦藁帽子をかぶったお揃いの白い服を着た女の子を連れてチャイムを押しているようだ。
最近流行りの子連れ宗教勧誘か?
全く面倒くさいなあ、とりあえず出てやるかと思い、下に下りて玄関を開けると誰もいない。
なんだよ、もう行ったのか。せっかく出てやったのに。
もう1回寝ようと再び2階の自分の部屋で横になった。
すると、
ピンポ~ン、ピンポ~ン
また鳴った。
窓から見るとまたあの親子だ。なんなんだ一体!
俺は半分キレぎみで下へ駆け下りた。
その間もず~と一定のリズムで鳴り続けるチャイム。
玄関のドアをバ―ンと開けて、怒鳴りつけようとして・・・・
誰もいない。ドアを開ける直前まで確かに鳴っていたのに。
隠れる場所なんてどこにもないし、どんなに足が速くても一本道の突き当たりにある家から見えなくなるはずがない。
しばらくポカ~ンとその場で立っていると・・・
ピンポ~ン、ピンポ~ン
目の前のインターホンに誰もいないのにチャイムが鳴り響いた・・・
俺はダッシュで家に入り鍵を閉め、部屋のカーテンをして布団に入って震えつづけた。
それからしばらくチャイムは鳴り続けた。
もう1回窓から玄関を見下ろすことはどうしても出来なかった。
次の日の朝、親にたたき起こされた。
「あんたに手紙。女の人からみたいよ。」
にやにやしている。新聞を取りにいって見つけたらしい。
白い封筒に名前は書いていない。なんでこれで女だって分かるんだよ!
とりあえず開けて見ると綺麗な文字で
「なにかがあなたの家へ入ろうとしています」
とだけ書いてあった。

17: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:36:11 ID:DlpS
おかあさんじゃない人

俺がまだ小学生のころの話だ。
俺んちは両親が共働きで、「鍵っ子」というか、夕方までは俺一人だった。
その日もいつもと同じように、居間でコタツに入って寝てたんだよ。母の帰りを待ちながらね。
玄関の鍵が開いた。ああ母親が帰ってきたんだな。
そう思った俺は「お帰りなさあい」と言おうした。
声が出ない。よく考えたら身動きが取れない。金縛りにあってるんだね。
玄関からぺたぺたとスリッパの音。
うちでスリッパ履くのは母親だけだから、母親には違いないんだろうけどなんか微妙に違う。
居間のドアが開いた。お母さん?と思ったが、この角度だと首が回らず顔が見えない。
でも音はするんだ。スリッパを脱いだらしい絨毯をすり足で歩いている。
ずりっ、ずりっ。
「ダイチャン。」「ダイチャン。デカケルワヨ。」
話す声の主は母親なんだが抑揚がない。
ずりっ、ずりっ。
声の主はさらに近づいてきた。
もうちょっと、あと2、3歩でその正体が見えるかな、というその時、玄関が開く音がもう一度して、「ただいまー」って母の声が聞こえたんだ。
その瞬間、金縛りは解けた。
もーワケ分かんなくって、ガクブルいいながら母親んとこに駆け寄ったよ俺は。
「なんかおかあさんだけどおかあさんじゃない人が来たー」ってさ。
そしたら母親の顔色が変わってさ。
晩飯食いながら聞いたんだけど、どうやら母親は双子だったそうなんだ。
貧しいからと母親の母方(俺のおばあちゃん)の実家に生まれてすぐ片方だけ預けられ、残った双子の姉は、栄養失調で亡くなったそうだ。
で、さらに聞くと俺は生まれてすぐ原因不明の高熱で死ぬところだったらしいんだ。
医者も見離し(2、3箇所まわったって言ってた)、どうしようもなく寺だか神社(スマンここ失念)に相談に行ったら、
「あなたの片割れの姉が、連れて行きたがっています」と。
俺は二人目の子供だから、私にも半分よこしなさいよ、ってことなんだろうけどさ。

18: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:36:39 ID:DlpS
ケンムン

奄美大島には、昔からカッパに似たけむくじゃらの妖怪・ケンムンがいると言い伝えられております。
子供のような小さな背丈で体はけむくじゃら、山羊の臭いをもち、頭にはさらがありよく山や海で人を化かすと伝えられています。
10年前、家族でめずらしく怪談話で盛り上がっていると、ふと思い出したように、次兄が興奮した口調で話しはじめました。
この前、夕方頃、友達に借りた双眼鏡で裏山をみてたんだ。
それでなんとなく遠くの山を見てたら、木のてっぺんの枝に、真っ黒な人が座ってるのが見えた!
あれ、絶対幽霊だぞ!なんか、体育座りしてたけど、膝が頭より高くて……
そこで私と母が同時にいいました。
「それ、霊じゃなくてケンムン!」
①ケンムンは山の木の上で休むことが多い
②ケンムンはよく体育座りをしている(だから昔は膝を抱えた座り方をケンムン座りといって嫌っていた)
③ケンムンは異様に足が長く、体育座りをしている時に膝が頭より高い
それを次兄に伝えると、「あれがケンムンなんだ、本当にいたんだ……」と青い顔をしていました。
肉眼ではまずめったに目撃されないケンムンですが、まさか双眼鏡で目撃できたとは、兄ちゃん、おそるべし!(笑)
すると、ウチの母が、長年きこりをしていた祖父から生前教えられたという話をしてくれました。
もしも山で迷ったりしてどうしても一晩を暗い山の中で過ごさなければならなくなったら、木の枝か何かで自分の周りの地面に、自分を囲むようにして少し広めの円を書きなさい。
そして山の神様に声にだしてお祈りしなさい。
「山の神様。私はかくかくしかじかな事情から一晩こちらの山に泊まらせていただくことになりました。
どうか今夜一晩、私が何事もなくいられますよう、私にこの土地を一晩だけお貸しください。
この土地の中にいる間、私を一切の災いからお守りください。」
そうしたら、一晩、ケンムンや獣たちが円の周りをぐるぐる回るが、決して円の中には入ってこれない。
それが山の神様との約束だからだ。
だから、山にのぼる時と下る時は、山の神様への挨拶とお礼を忘れてはいけない。
山の神様は、よく見てるからね。
ケンムンでも、山の神様には逆らえないということなのでしょうか。

19: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:36:59 ID:DlpS
深夜の入浴

ついつい最近のお話。
その日、仕事関係の飲み会が終わって深夜に帰宅した。
次の日が休みでゆっくりと時間が取れるので、深夜にもかかわらず湯船に湯を張って入ることにした。
時間は二時前後。
小説を持って湯船に入り三十分程して頭を洗った。
ふと右側に気配を感じシャンプーの付いたまま湯船の方を振り向いた。
いた。
顔が不自然に長い痩せこけた女。
声を出そうにもビビッて出せない。
シャワーの音だけが浴室に響く。
怖い。目を背けようにも首が動かない。
横を向いていた女の首がだんだんとこっちを向き始めている。
ヤバイ。
心の中でひたすらにお経を唱えた。
全然効いてない様だ。悪寒が走る。
その時、隣の家の犬が吠えた。
女はゆっくりと消えていった。
それこそ、本当に恨めしそうな表情を浮かべて。
それ以来、どんなに汚れていても深夜に風呂に入る事はなくなった。

20: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:37:24 ID:DlpS
ねじれた女

自宅のトイレにデカい窓がある。ちょうどトイレの床から1mくらいのところに。
トイレの匂いを出す為に、いつも10cmほど開けっ放し。
ま、自宅代わりに借りてるビルの5階だからいいんだけど。
3年前、真夜中に帰宅した俺はトイレでゲェゲェ吐いてた。
俺は飲酒時にはすぐに気分が悪くなるが酔っ払った事はない。
嘔吐も一段落して、俺は便座にもたれ掛かったまま、ふと窓を見上げた。
窓は開いていなかった。
いや、隙間に変な白いモノが詰まっていただけだ。
よく見てみると、それはヒモ状に伸びた白い細い、ねじれた女だった。
それがひしゃげた顔して何かを喚いていた。
「ジ、ジジジ、ジジジ、ジッフフフ、ジジジジアアアア」
俺はそのまま後ろに倒れこみ、四つん這いのままトイレから脱出。
ヒィヒィ息を荒げたまま自分の部屋に逃げ込んで、TVの音量を上げて友人に電話をかけまくった。
あれ以来トイレの窓は防犯用のロックでしっかり固定して、締め切ってるよ。
幽霊ってしゃべれるんだな、って思った出来事だったよちくしょう。

21: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:37:52 ID:DlpS
不審な飛び降り自殺

サイレンやら何やらで外が騒がしいので、様子を伺いに出てみた。
すると下の階で警察が現場検証?らしき事をしていた。
「何かあったんですか?」と尋ねると
「4階で飛び降り自殺があったんだよ。」
うわぁ、と思って思わず下を除いてみると、確かに下では誰かを搬送しているようだった。
「危ないから覗かないでね。」と言われ、俺だってあんまり長居したくないし、早々に自分の部屋へ引き上げた。
しばらくして、どうなったかな?と気になって外に出てみると、まだ警察の現場検証が終わってなかった。
現場検証ってやる事いっぱいあって忙しいんだなーと思って、
「お疲れ様です、現場検証って時間かかるんですねー。」と警察に話しかけた。
すると、警察は「いや、ちょっと不審な点が多くて時間がかかってる。」と言った。
なんかあるんですか?と尋ねると、飛び降りたのは20代女性。
4階から飛び降りて即死だったらしいんだが、どうも飛び降りる以前に打撲の痕がある。
それに加え、階段に謎の血痕があり、結局それは彼女のものだったという。
いじめを苦にした自殺だろうなと思っていたが、風の噂でこんな事を聞いた。
恋愛と仕事の失敗で落ち込んでたらしい。

22: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:38:07 ID:DlpS
解説 1度飛び降り自殺に失敗しており、2度飛び降りている。

23: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:40:21 ID:DlpS
167 名前:1/3 投稿日:2007/02/05(月) 22:47:31 ID:uuWi3n130

一週間前の話。
娘を連れて、ドライブに行った。
なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。
で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。

娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。 そしたら、急にエンジンが停まってしまった。

山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから
娘と途方に暮れてしまった。飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか。
で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン行くことにしたんだ。

車内で寒さをしのいでるうち、夜になった。
夜の山って何も音がしないのな。たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。

で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。 俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。

今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで

「テン(ケン?)・・・ソウ・・・メツ・・・」って何度も繰り返してるんだ。

最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、 音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ。

24: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:40:31 ID:DlpS
168 名前:2/3 投稿日:2007/02/05(月) 22:48:10 ID:uuWi3n130

そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいてくるのが見えた。
形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで足は一本に見えた。
そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。

めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは
「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることもできないでいた。

そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。
通り過ぎる間も、「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」って音がずっと聞こえてた。

音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして
娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。
近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。思い出したくもない恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。

俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って叫んだんだ。
叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。

俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」ってぶつぶつ言ってる。

25: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:40:52 ID:DlpS
169 名前:3/3 投稿日:2007/02/05(月) 22:48:49 ID:uuWi3n130
やばいと思って、何とかこの場を離れようとエンジンをダメ元でかけてみた。そしたらかかった。急いで来た道を戻っていった。娘はとなりでまだつぶやいている。

早く人がいるとこに行きたくて、車を飛ばした。ようやく街の明かりが見えてきて、
ちょっと安心したが、娘のつぶやきが「はいれたはいれた」から「テン・・ソウ・・メツ・・」に
いつの間にか変わってて、顔も娘の顔じゃないみたいになってた。

家に帰るにも娘がこんな状態じゃ、って思って、目についた寺に駆け込んだ。
夜中だったが、寺の隣の住職が住んでるとこ?には明かりがついてて、娘を引きずりながらチャイムを押した。

住職らしき人が出てきて娘を見るなり、俺に向かって「何をやった!」って言ってきた。
山に入って、変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして、気休めにしかならないだろうが、
と言いながらお経をあげて娘の肩と背中をバンバン叩き出した。

住職が泊まってけというので、娘が心配だったこともあって、泊めてもらうことにした。
娘は「ヤマノケ」(住職はそう呼んでた)に憑かれたらしく、49日経ってもこの状態が続くなら一生このまま、正気に戻ることはないらしい。
住職はそうならないように、娘を預かって、何とかヤマノケを追い出す努力はしてみると言ってくれた。
妻にも俺と住職から電話して、なんとか信じてもらった。
住職が言うには、あのまま家に帰っていたら、妻にもヤマノケが憑いてしまっただろうと。
ヤマノケは女に憑くらしく、完全にヤマノケを抜くまでは、妻も娘に会えないらしい。

一週間たったが、娘はまだ住職のとこにいる。毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。 ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。 早くもとの娘に戻って欲しい。

遊び半分で山には行くな。

26: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:42:24 ID:DlpS
そこれは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、
早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
都会とは違い、空気が断然うまい。
僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。

ID:NylgDUM3(1/18)
0010 風吹けば名無し 2012/03/09 03:02:27
そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風か止んだ。
と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、
さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。

すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。

ID:NylgDUM3(2/18)
0011 風吹けば名無し 2012/03/09 03:03:34
その方向には案山子(かかし)がある。
『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、
兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。

僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。

27: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:43:29 ID:DlpS
0013 風吹けば名無し 2012/03/09 03:04:48
何だ…あれは。

遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。

しかも周りには田んぼがあるだけ。
近くに人がいるわけでもない。
僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。

『あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かった
から、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。

28: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:43:34 ID:DlpS
0018 風吹けば名無し 2012/03/09 03:07:22
兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、
はりきって双眼鏡を覗いた。

すると、急に兄の顔に変化が生じた。

みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、
ついには持ってる双眼鏡を落とした。

僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』
ID:NylgDUM3(6/18)
0019 風吹けば名無し 2012/03/09 03:08:47
兄はゆっくり答えた。

『わカらナいホうガいイ……』

すでに兄の声では無かった。

兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を
取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。
しかし気になる。
遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。 少し奇妙だが、それ以上の恐怖感は起こらない。

29: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:44:13 ID:DlpS
0022 風吹けば名無し 2012/03/09 03:10:11
しかし、兄は…。
よし、見るしかない。
どんな物が兄に恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!
僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。
その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。
僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、
すごい勢いで祖父が、
『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』
と迫ってきた。
僕は『いや…まだ…』と少しキョドった感じで答えたら、祖父は『よかった…』
と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。

0024 風吹けば名無し 2012/03/09 03:11:17
僕は、わけの分からないまま、家に戻された。

帰ると、みんな泣いている。
僕の事で?いや、違う。

よく見ると、兄だけ狂ったように
笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。
僕は、その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。
そして家に帰る日、祖母がこう言った。

30: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:44:52 ID:DlpS
0027 風吹けば名無し 2012/03/09 03:12:29
『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。
あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か
経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』

僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。
以前の兄の姿は、もう、無い。
また来年実家に行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。

何でこんな事に…ついこの前まで仲良く
遊んでたのに、何で…。0030 風吹けば名無し 2012/03/09 03:13:31
僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。
ずっと双眼鏡を覗き続けた。『いつか…元に戻るよね…』そう思って、兄の元の姿を
懐かしみながら、緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。そして、兄との思い出を
回想しながら、ただ双眼鏡を覗いていた。

…その時だった。
見てはいけないと分かっている物を、間近で見てしまったのだ。

『くねくね』

31: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:45:33 ID:DlpS
漏れにはちょっと変な趣味があった。その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出てそこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。
いつもとは違う、静まり返った街を観察するのが楽しい。
遠くに見えるおおきな給水タンクとか、酔っ払いを乗せて坂道を登っていくタクシーとか、ぽつんと佇むまぶしい自動販売機なんかを見ていると妙にワクワクしてくる。

漏れの家の西側には長い坂道があって、それがまっすぐ漏れの家の方に向って下ってくる。
だから屋上から西側に目をやれば、その坂道の全体を正面から視界に納めることができるようになってるわけね。
その坂道の脇に設置されてる自動販売機を双眼鏡で見ながら「あ、大きな蛾が飛んでるな~」なんて思っていたら、坂道の一番上のほうから物凄い勢いで下ってくる奴がいた。
「なんだ?」と思って双眼鏡で見てみたら全裸でガリガリに痩せた子供みたいな奴が、満面の笑みを浮かべながらこっちに手を振りつつ、猛スピードで走ってくる。
奴はあきらかにこっちの存在に気付いているし、漏れと目も合いっぱなし。
ちょっとの間、あっけに取られて呆然と眺めていたけど、なんだか凄くヤバイことになりそうな気がして、急いで階段を下りて家の中に逃げ込んだ

ドアを閉めて、鍵をかけて「うわーどうしようどうしよう、なんだよあれ!!」
って怯えていたら
ズダダダダダダッって屋上への階段を上る音が。明らかに漏れを探してる。
「凄いやばいことになっちゃったよ、どうしよう、まじで、なんだよあれ」って心の中でつぶやきながら、声を潜めて物音を立てないように、リビングの真中でアイロン(武器)を両手で握って構えてた。

しばらくしたら、今度は階段をズダダダダッって下りる音。
もう、バカになりそうなくらいガタガタ震えていたら
ドアをダンダンダンダンダンダン!!って叩いて、チャイムをピンポンピンポン!ピポポン!ピポン!!と鳴らしてくる。
「ウッ、ンーッ!ウッ、ンーッ!」って感じで、奴のうめき声も聴こえる。
心臓が一瞬とまって、物凄い勢い脈打ち始めた。
さらにガクガク震えながら息を潜めていると、数十秒くらいでノックもチャイムもうめき声止んで、元の静かな状態に……。
それでも当然、緊張が解けるわけがなく、日が昇るまでアイロンを構えて硬直していた。
あいつはいったい何者だったんだ。
もう二度と夜中に双眼鏡なんか覗かない。

32: 名無しさん@おーぷん 21/05/20(木)12:45:52 ID:DlpS
おわり!

引用元 https://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1621481294/